近年、世界や日本では、レズ、ゲイ、バイ、トランスジェンダーの方などのセクシャルマイノリティの方の社会認知が広まっています。
セクシャルマイノリティの方々は、LGBTと呼ばれていますが、最近では、「Q」を加えたLGBTQと呼ばれることも増えてきました。
「Q」とは「クィア」を指す言葉ですが、クィアとはいったいどういった言葉でしょうか?
日本ではまだ認識が広まっていないと思われるクィアについて、歴史や定義を解説していきます。
【基本】そもそも性は一言で表すことができないもの
一般的に認識されている性は、「見た目が男性の方は、中身も男性で、異性の女性が好き」、「女性であれば、見た目は女性で中身も女性、好きな異性は男性」が当たり前だと考えられています。
しかし、世の中には見た目の性、自分の中身の性、好きな性が一致しない人が存在します。
それが、いわゆるLGBTQと呼ばれるセクシャルマイノリティの方々です。
性の4大要素|【性の認識】と「他者との関わる性」
生物的に男性として生まれたら男性、女性として生まれたら女性と思っている方がほとんどだと思います。
ところが、性を決める要素は4つあります。主に以下の4つの要素で成り立っています。
- 生物学的な性(からだの性)
- 性自認(こころの性)
- 性的指向(好きになる性)
- 性表現(表現する性)
4つの合わさり方次第では、自分の中の性別の認識と他社と関わるときの性別とでズレが生じることがあります。
つまり多様な性が存在することになり、これがクィアとよばれる包括的な性の正体なのです。
固定観念|○○らしさの考え方は【LGBTコミュニティ】にも存在
人は、普通に生活しているだけで、メディアや社会から「男らしさとは」「女らしさとは」といった情報を大量に受け取っています。
その情報は、古くからある価値観であり、人々の意識の中に固定観念として存在します。
LGBTコミュニティ内でも、ゲイの人は髭を生やした筋肉隆々の人が好き、レズビアンであれば女の子らしい子が好きといった性の固定観念にとらわれた考え方の方も根強く残っています。
性の固定観念が、クィアの方々の自分本来の性を素直に表現しにくくしている原因の一つと言えるのです。
クィアとは?【セクシャルマイノリティ】を包括的に表す言葉
LGBTQの「Q」は、Queer(クィア)という英単語の頭文字をとってQとしています。
直訳すると風変わりな、奇妙なといった意味ですが、現代ではセクシャルマイノリティなどの包括的な性を表す言葉として使われるようになりました。
LGBTとクィアの違いはどのようなものでしょうか。
LGBTとは、レズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字です。一方、クィアは、レズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーも含む更に広い意味の性を表します。
シスジェンダーとヘテロセクシャル以外の全てを含む!
クィアは、レズ、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーも含む更に広い意味の性を表しますと説明しましたが、正確にはシスジェンダーとヘテロセクシャル以外の全ての性の事を指します。
- シスジェンダーとは、心の性と体の性が一致している人
⇒見た目が男性、女性で、自分も男性、女性と認識している人のことです。 - ヘテロセクシャルとは、心の性と好きになる性が一致している人
⇒男性が異性の女性を好き、女性が異性の男性を好きという性的嗜好を指す。
ゲイやレズビアンの人も?あえて自称してる人も多い!
ゲイやレズビアンの方々でも、自らの性の表現の仕方をゲイやレズと呼ぶのではなく、あえて「クィア」を自称している方も多くいます。
自分たちが、社会的に十分に受け入れられているとは言えない、セクシャルマイノリティであっても、自らの性の表現になんら負い目を感じることがなく、普通に生きていていいんだと主張する目的でもあります。
このようにクィアを自称する方が多くいることは、クィアが使われるようになった、語源や歴史的背景もあります。
否定的から肯定的な言葉へと変化!クィアの歴史を解説
LGBTQの「Q」は、Queer(クィア)という英単語の頭文字をとってQとしています。
クィアは、様々な歴史を経て現代では、包括的な意味でセクシャルマイノリティを指す言葉として使われていますが、どのような歴史を経て、今のような言葉の意味を獲得したのでしょうか。
クィアの歴史について、言葉の意味の変化や使われ方にスポットを当てて解説していきましょう。
元々は「奇妙な、変わり者」!【侮辱】として使われた
クィアの元となる英単語のQueerは、直訳すると風変わりな、奇妙なといった意味を持ちます。
20世紀までQueerは、レズ、ゲイなどのセクシャルマイノリティに対して、「普通じゃない変態野郎、オカマ野郎」といった相手を侮辱する意味のスラングとして使われていました。
2000年に入ったあたりからLGBTの方々が、クィアを差別用語としてではなく、私達の性は一言で表すことができない包括的な性といったポジティブな意味の用語としてクィアを使い始めたのです。
20世紀以降は【連帯】の言葉に!当事者が社会運動で使用
包括的な性といったポジティブな用語として使われ始めたクィアですが、20世紀以降には、セクシャルマイノリティが連携するための言葉としても使われ始めました。
レズビアン、ゲイ、トランスジェンダー等が、社会的に受け入れられ、もっと自由に生きやすい世の中にするための社会運動が、2000年以降活発に行われはじめました。
そこで社会運動の当事者たちが、シスジェンダーとヘテロセクシャル以外の全てセクシャルマイノリティが、連携して住みよい社会を作るための言葉として、自分たちを一つにまとめて表す言葉として「クィア」を使い始めたのです。
日本ではまだ認知度低い!日本独自の表現【Xジェンダー】
世界では、認知度が広まりつつあるクィアという言葉ですが、日本ではまだまだ認知度が低いのが現状です。
原因として、「Xジェンダー」と呼ばれる、セクシャルマイノリティの方々への日本独自の表現があります。
Xジェンダーとは、からだの性が男性であるのにこころの性は女性、からだの性は女性であるのにこころの性は男性であり、本来の性とはクロスしているという理由から呼ばれるようになりました。
しかし、既に説明した通り、性は4つの要素からなるため、組み合わせは多数あります。2種類の定義しかないXジェンダーでは正確に表現できないため、クィアと表現したほうがより幅広い性を説明できます。
なぜ【LGBTQ+】の表現方法に?その3つの理由
今までLGBTQのQについて説明してきました。
最近では、LGBTQに加えて、さらに幅広い性を表現する言葉として、「LGBTQ+」といった言葉が使われ始めています。
「+」とはいったいどういう意味を表現しているのでしょうか?
今まで以上に性に対する多様な考え方が広まりつつある現代にマッチする「LGBTQ+」という表現についてみてみましょう。
① LGBTは4つのセクシャリティの頭文字である
セクシャルマイノリティを指す言葉として、もっとも知られているのがLGBTだと思います。
「LGBT」とは、今までの説明でもあったように、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字をとった表現です。
しかし、これまでの説明通り4つの性の要素があり組み合わせの数だけ性の表現があります。
4要素の組み合わせだけで256通りもありますので、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの4種類には到底収まり切りません。
② 自分の性を定めない人もいる!クエスチョニングなど
レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの4種類に当てはまらない、多様な性を持つ方々は、クィアという包括的な意味で自らを表現するようになりました。
また、Queer以外の意味としてもクエスチョニング(Questioning)といった考え方も生まれてきたのです。
「私は男性なの?女性なの?ゲイなの?バイなの?どれかに決めなきゃいけないの?」といったように自らの性別についてクエスチョン(疑問)を持つことで、あえて特定の性を定めないという考え方です。
③ 性の多様性!定義や枠組みで表現することは難しい
従来考えられていたようなレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの4種類では、人の性は定められないといった考え方が少しずつですが、浸透しつつあります。
そうした考え方が広まることで、「性を特に決めなくてもいいんじゃないの?」とクエスチョニングを持つ人たちが確実に増えています。
このような性の多様化が進む中で、性を定義することや、従来の枠組みの中で理解することが難しくなっていることを理解しておく必要があるでしょう。
まとめ|性の多様性を理解しよう!
- 世の中には見た目の性、自分の中身の性、好きな性が一致しない人が存在する。
- 性を決める要素は4つ(1)生物学的な性(からだの性)、(2)性自認(こころの性)、(3)性的指向(好きになる性)、(4)性表現(表現する性)
- LGBTQの「Q」は、Queer(クィア)は、現代ではセクシャルマイノリティなどの包括的な性を表す言葉として使われている。
- 性の多様性が進む現代では、自らの性を定めない人達も存在する。
いかがだったでしょうか。
この記事を読んで、みなさまの理解が深まり、多様性のある性を受け入れていくことが、住みよい社会を作るためにとても重要です。
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