トランスジェンダーは診断できる?性同一性障害から世界や日本における診断や治療の現状まで徹底解説!

トランスジェンダーって、病気なの?」自分をトランスジェンダーだと感じている方の中には、こんな不安を抱いている方もいるのではないでしょうか。

「性同一性障害」という言葉があるように、世間では「トランスジェンダー=障害、病気」という認識があることは確かです。

そこで、この記事ではトランスジェンダーについての疑問を、セクシャルマイノリティ当事者の立場から徹底的に解説していきます。抱え込んでいた疑問や不安を、一緒に解決していきましょう。

気になる疑問!トランスジェンダーは診断できるの?

この記事をご覧になっている方の多くは、「トランスジェンダーは医師に診断されるものなのだろうか?」という疑問をお持ちでしょう。

この疑問に簡潔にお答えすると、答えは「NO」です。トランスジェンダーとは誰かから診断を受けるものではなく、あくまで自分が「自分の性についてどのように感じるか」に判断が任されます。

自分の性自認が関係!他人による判断は難しい場合も

トランスジェンダーとは、自認している性別(性自認)と生まれもった身体の性別(身体的性)が一致していない人のこと全般を指した言葉です。厳密には、さらに3つに分類されたうちに「トランスセクシャル」に当てはまりますが、ここでは割愛します。

トランスジェンダーが”LGBT”に含まれる他のセクシャルマイノリティと異なるのは、性的指向ではなく「性自認」が重要視される点です。男性、女性、中性、無性など…「自分で自分の性別をどう思うか」が観点になるため、他人からは安易に判断できません。

外科的治療を望む!【性同一性障害(GID)】として診断

他人や医師から診断されるものではないトランスジェンダーですが、例外として医師に診断を受けるケースもあります。それは「外科的な治療」を望む場合です。具体的には「性別適合手術(性転換手術)を受けたいかどうか」になります。

現在の日本では、生まれもった身体の性別に嫌悪感を抱き手術を望む場合、医学的な診断が必要です。そのような場合に限り、トランスジェンダー(厳密にはトランスセクシャル)は、「性同一性障害(GID)」という医学用語で医師からの診断を受けなければいけません。

診断する方法とは?精神的・身体的なあらゆる面から

では、実際に「性同一性障害(GID)」の診断はどのように行われるのでしょうか。これについては、厚生労働省できちんとした手順が定められており、原則2名の精神科医によって診断が下されます。具体的には、以下の4ステップです。

  1. 生物学的性(身体の性別)の決定…染色体検査、ホルモン検査、内性器、外性器の検査
  2. ジェンダー・アイデンティティ(性自認)の決定…生い立ち、今までの生活、服装、これまでの言動、人間関係、職業など
  3. 生物学的性別(身体の性別)とジェンダー・アイデンティティ(性自認)の不一致の明確化
  4. 除外診断に当たらないことの確認…性分化疾患(DSDs)、精神的障害、社会的理由での希望

 

専門的なジェンダー外来がある病院も!

外科的治療を望む場合、性同一性障害として精神科の医師から診断を受ける必要があります。ですが、今までの経験からトランスジェンダーだと他人に明かすのをためらってしまう方もいるでしょう。

そんなときは、ぜひ「ジェンダー外来」を活用してください。トランスジェンダーや性同一性障害に理解のある医師やスタッフの元で診療を受けることができます。

また、自分の性について悩んでいる状態だったり、診断を受ける前に気持ちを理解した上で客観的な意見を聞きたい場合もあるでしょう。ジェンダー外来では、専門的な知識を持った医師に相談することも可能です。

性同一性障害は病気や精神障害なの?

トランスジェンダーが性別適合手術を望む場合、日本では「性同一性障害」という医師の診断が必要となります。この名前から、世間では「性同一性障害=病気・障害」というイメージがついてしまっているのが現状です。

では、実際に「性同一性障害」は病気なのでしょうか?これについては、世界保健機関(WHO)で具体的に定義が決まっています。

2018年にWHOにより【精神障害から除外】

WHOでは、「国際疾病分類(ICD)」という医療機関での診断や治療を必要とするけがや病気、死因など5万5000項目をまとめたなどの国際的なリストをまとめています。その中で、1990年に行われた改訂により「性同一性障害」は精神障害と位置付けられました。

ですが、2018年に行われた改訂により、WHOは「性同一性障害」を精神障害の分類から除外。「性の健康に関連する状態」の分類へ移動し、名称も「性別不合」と改められたのです。

最新の改訂が正式に効力を発するのは2022年1月1日からですが、これにより、「性同一性障害」は病気や精神障害ではないということが国際的に宣言されることになります。

 

性別変更に性同一性障害の診断が不要な国も!

性同一性障害(性別不合)の人たちは、自らの身分証明(日本では戸籍)の性別を変更することを望んでいる場合が多くあります。実は、この性別変更については、WHOの宣言以前から世界各国によってハードルが異なっていたことをご存知ですか?

2012年、アルゼンチンで世界初「精神科医の診断なしに性別変更を可能とする法律」が制定されました。これ以降、デンマークやノルウェーなどのヨーロッパ各国で同様の法律が制定されています。

日本では?性同一性障害の診断や治療について

世界では「性同一性障害は病気ではない」という認識が広まっていますが、現状の日本はどうなのでしょう。これまで説明してきた中で、外科的治療を望む場合に性同一性障害の診断が必要であることはおわかりいただけたと思います。

日本では、外科的な治療以外にも「トランスジェンダーを性同一性障害という病名で診断」しなくてはいけない場面が出てくるのです。

現在の法律では戸籍上の【性別変更に必須】である!

日本では、2004年に施行された「性同一性障害特例法」で、戸籍上の性別を変更するために以下の5つの要件を満たしている必要があります。

  1. 年齢要件:20歳以上であること(2022年4月1日から18歳以上に)
  2. 非婚要件:現に婚姻をしていないこと
  3. 子なし要件:現に未成年の子がいないこと
  4. 手術要件(生殖不能要件):生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
  5. 外観要件:その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること

特に、この4、5番目は「性別適合手術」が完了していることを指しています。つまりは性同一性障害の診断が必要になるということです。

2018年から性別適合手術への保険適用が開始!

戸籍の性別を変更するための必須条件となる「性別適合手術」は、2018年4月から保険の適用が開始されました。ですが、適用開始から2019年10月までの間に、実際に保険が適用されたのは症例の10%となっています。

これには、日本の医療制度にある「混合診療」が関わってきます。通常、性転換手術を予定している方たちは、手術より前にホルモン治療を受けていることがほとんどです。ですが、ホルモン治療には保険が適用されていません。

同じ病気に対して保険診療と保険適用外の診療を行った場合、「混合診療」と判断され、すべての診療が保険適用外となってしまうのです。そのため、性別適合手術に保険が適用されるのは現状ごく一部の方々となっています。

診断後は?ホルモン治療や性器の摘出手術など

性同一性障害と診断された後、すぐに性別適合手術に移るわけではありません。性同一性障害の治療は、厚生労働省により段階的に決められています。以下、詳しい治療の段階です。

  1. 精神療法…今まで受けてきた精神的・社会的・身体的苦痛について十分にヒアリングをする。
  2. 内分泌療法…十分な精神療法の後、性自認と身体的性の不一致に悩み、希望する場合にホルモン治療が行われる。(原則満18歳。第二次性徴を抑える目的として、15歳に引き下げられる場合もある)
  3. 外科的療法…上記の2つの段階が十分に行われ、なおかつ手術療法を希望する場合に「性別適合手術」が行われる。手術に耐えうる精神状態、身体状態である必要がある。(満20歳以上)

LGBTの相談窓口やカウンセリングも利用を!

性同一性障害やトランスジェンダーなどセクシュアリティについての悩みは、当事者の誰もが抱えている問題です。しかし、社会の反応や親の反応などを考えると、誰かに打ち明けて相談するということはとても勇気が必要となります。一人で悩み続ける間に、だんだんと思いつめてしまう方も多くいらっしゃるでしょう。

そんなときは、ぜひLGBTの相談窓口を活用してください。認定NPO法人 虹色ダイバーシティのホームページでは、「LGBTQ電話相談リスト」として全国のLGBTQ関係の電話相談窓口がまとめられています。

心療内科や精神科でカウンセリングを受け付けている場合もあります。インターネットでLGBTQフレンドリーな病院を検索し、一度予約をしてみるのも良いでしょう。

まとめ│トランスジェンダーは自分で決めるもの

社会的に認知され、理解が広まりつつあるトランスジェンダー。国際的に病気や障害ではないことが認められましたが、まだ正しい理解をしていない人も世間には存在しています。

また、厳密には「トランスジェンダー=性同一性障害」ではありません。性自認と身体的性が異なるからといって、診断や手術を受けなければいけない決まりはないのです。

「トランスジェンダー」か否かは、世間や他人からではなく、全て自分で決められます。この記事を含め様々な情報が溢れていますが、これらは決定事項ではなく、自分で判断するための材料に過ぎません。ぜひ、自分の心に正直に、自分の性を受け入れてあげましょう。

KANTA

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